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『十三人の刺客』鑑賞
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    公式サイト
    東映・工藤栄一・池宮彰一郎の不朽の名作のリメイクである。
    幕末寸前というか家慶の時代ですな。将軍の実弟であり暴君・明石藩主松平斉韶を仕留める為に死命を帯びた島田新左衛門達十三人が、策謀を巡らして中仙道・落合宿に罠を仕掛け、斉韶と彼を守る鬼頭半兵衛らの一行を襲撃するという作品ですな。
    東映時代劇らしい本作が東宝作品になると聞いて、『四十七人の刺客』の悪夢が甦りましたが、三池崇史監督作品なので、帳消し。見事今時珍しい、ズンバ、ズンバと斬って斬ってぶった斬りまくるアクション娯楽時代劇と相成りました。今回大幅に変更されたところは主にこんな感じ。
    ・斉韶がスーカンの粘着質なタイプから、稲垣メンバーのただのサイコ系に。そのせいか当時の表現から逸脱して、手足を切り落とされて舌を抜かれた明石藩の百姓一揆の首謀者の娘が登場。さらにメンバーが膳の食事を全部混ぜて犬食いするわ、鬼頭が罠だと見抜いた路地に楽しみを求めて入り込んで行くとか、これもまた怪演。
    ・明石藩一行が53人から200騎300人に。
    ・郷士・山城新伍が殆どバケモノの山の民・伊勢谷友介に。この辺り、ギャグが増えてます。

    でー、結論から書きますと、この映画、面白いです。話のテンポが良く、中盤の伊勢谷周辺のエピソードを中弛みと取るか面白いと取るかで違ってきますが、この十三人目の刺客はありかと。特に巻き込むまいと気を遣った刺客達に後ろから殴りつけられて気にせず、もう一発殴られても全く気にしないとか、村中の女を犯りまくった後に庄屋の魔岸辺一徳の後ろを掘るとか、刀を持たずに暴れ回ってやられたと思いきや、最後に平気な顔して現れるとか、かなりおいしい役になってます。他の出演陣も野性味溢れる面構えが揃っていて、終盤も人数6倍増しでひたすら斬りまくりで、最近の文芸風味重視の作品と比較して実に王道の痛快時代劇になっています。というか、照明とかで昭和30年代の東映映画のような色調になっている点が実に素晴らしい。

    とはいえ手放しで誉められるかというと、やはりさに非ず。この辺は天願大介も苦労したと思うが、脚本と構成に不満が残る。何を残し、何を取り去り、何を加えるかがリメイク作品の肝となるが、本作は前述のように痛快ズンバ斬り時代劇として楽しめる反面、オリジナルの持っていた「島田と鬼頭の知謀合戦」「太平の時代の戦を知らぬ武士達の殺し合い」「封建制の悲劇」がおろそかになってしまっているのだ。
    それ故個人的に一番気になったのが、明石藩一行を宿場街に閉じ込めた所に島田達リーダー格が堂々と登場し(いい矢の的である)、口上を述べた挙げ句、「この後は小細工はありもうさん」と高らかに宣言するところ。
    小細工をしろよ! 罠に掛けろよ! 明石藩士以上に観客をうんざりさせろよ! オリジナルより敵の人数が増えているのに、罠に凝るどころか、オリジナルが司令部・工作隊・遊撃隊(?)と役割分担して将棋のように戦っていたの駆け引きの醍醐味を、いきなり放り捨ててしまったのである(オリジナルは千恵りんを走らせ続けるわけにもいかないという配慮の賜物かもしれないが)。だから斬り合いの面白さはあるものの、『四十七人の刺客』で四十七士が権謀術数を駆使して屋敷の図面まで取り寄せていざ攻め寄せたらいちいち罠に驚いてあたふたしている間抜けな展開が再現されるような、駆け引きの応酬の醍醐味がすっぱり抜けてしまったのである(もちろん口でそう言って敵を油断させておきながら、また二重三重に罠を仕掛けている卑怯さがあるならまた面白かったのだが)。そのせいか刺客達の最後にメリハリが不足していて、とにかく殺されまくるもののあまり印象がないですな。
    次に引っかかったのが、敵の勇敢さ。オリジナル同様発狂する藩士も一応出るし、300人という数で優勢とはいえ、これだけの騒ぎと混乱の中で全藩士が勇敢で、刺客が登場してもさほど動揺しない。オリジナルの壊乱寸前のパニックとなり、鬼頭が味方も斬り殺さんばかりに恫喝して建て直しを図るようなシーンは無し。これなら島田側も選抜しなくても、実戦に役立ちそうな人材がそこらに転がっていたような気がしますわ。オリジナルだと刺客側も不利になると狂乱状態になってあがきまくっていて、その辺りの描写は雲泥の差でしたな。
    後は「封建制の悲劇」ですが、役所のキャラクターもあるのか、そもそも自分の命を投げ出すという部分が軽いですな。オリジナルの千恵りんが義戦とはいえその責を最小限に抑える為に自ら相討ちを選ぶ虚しさはゼロ。特にオリジナルでスーカンが見せた、尊大で高慢で妙に当時ならいそうだったバカ殿役を、稲垣メンバーは別の切り口で熱演していたが、特に意外性のあるオチもなく、とはいえ悪役に徹するわけもなく何か意味ありげに愚痴愚痴としてるし、何とも中途半端で消化不良な役に終わっていたのが残念。ここらへんでもう一ひねりあれば、不足気味だったドラマ要素をいい形で収束させて映画に厚みを加えることができたと思うのだが。
    そんな感じなので、水準以上の作品ではありますが、やはり「今」の時代劇であるという点ではそれ以上のものではありませんでした。
    ああ、あと明石藩一行に突入する、火を点けられた牛の群。あそこは見え見えのCGでやっちゃいけませんわ。それと冒頭の「原爆投下百年前」という時代説明は何の意味があるの? もしかして将軍様の弟である斉韶を上海派遣軍の司令官で昭和(以下略)
    | 映画・TV | 23:59 | comments(0) | trackbacks(1) | - | - |









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    | 【@らんだむレビューなう!】 Multi Culture Review Blog | 2011/01/17 10:44 PM |