2008.07.07 Monday
『新五捕物帳』92話『十字架の光の陰に』
最近時代劇ばかり連続して観ていてちょっとしんどい状況なのだが、『新五捕物帳』が出ていたので、つい観てしまった。杉良太郎『新五捕物帳』といえば、ほりのぶゆきの「おとこのいかぁりかぁ」「江戸の黒豹」で別の意味で知名度が上がった(?)感があるが、とにかくやりきれない思いの残る暗く哀しい結末の物語と、洒落にならんぐらい悪人を痛めつける杉良の入れ込んだ演技(と裾まくった、おばさま連中へのサービスカットの連発)が印象的だが、中でもトラウマになっていた92話『十字架の光の陰に』(脚本:山野四郎)がDVDにセレクトされていたんですな。長崎から江戸に来た罪人と役人の為に江戸の牢屋で流行病が発生。看病を嫌がって手伝いが逃亡する中、長屋の姉妹が看病を買って出る。感染し、絶命する妹。そして新五も倒れるが、奇跡的に回復する中、その長屋が隠れ切支丹の巣窟であることを悟る。……という物語で、切支丹が完全に他に奉仕する善として描かれている点は『沈黙』等と比べる以前にやりすぎな気もするが、まあ1時間ドラマに詰め込むにはやむを得なかったのであろう。長屋の住人が土壁に向かって合掌している所に来た新五の眼前で、土壁に突然ひびが入り出し、これまた見事に壁が崩れ出して中からある物が出て来るシーンは、あまりの性急な演出にオカルトかと思いましたよ。
で、どういう経緯があったのかは不明だが、隠れ切支丹であることがばれて長屋の住人全員がしょっ引かれ、老人から子供、そして件の姉までが踏み絵を拒否して磔にされることが決定(実際には踏み絵に達するまで、そして転んだ後もまた地獄なのだが)。嘆き苦しんだ新五が絶叫し、「俺も切支丹だ、俺も処刑しろ」と喚き出し、同心達が数人がかりで暴れる新五を押さえつけて踏み絵を踏ませ、刑場で放心した新五が泥だらけの踏み絵を抱き抱えたまま落涙しているところで終わるという結末。いつも鬱な話が多いものの、今回は殺陣も一切無く、カタルシスなんかありゃしねぇ。結局社会階層の末端から抜け出る事もできない虫の抵抗という感じだが、このニューシネマな無力感溢れる物語、やはり好きですな。