2007.10.08 Monday
『首』『ビューティ・ペア 真っ赤な青春』鑑賞
またシネマヴェーラである。でも今週はまた行くので。たはは。
まずは『ビューティ・ペア 真赤な青春』。『ドーベルマン刑事』と二本立てだったか。監督は内藤誠で、まー同時代の『カリフォルニア・ドールズ』とかと比較するのは酷というか、しちゃいけませんな。1時間にも満たない尺で、ジャッキーが怪我→コンビ解散の危機の中、二人の回想→そして復帰後ブラック・ペア(懐かしいね。しかもマミ熊野やデビル雅美ではなく、初代の阿蘇)との3本マッチで勝利、という流れ。冒頭ジャッキーが倒されて入院し、回想が始まった時に「二人の出番は最初と最後だけで、後は別人が……」と一瞬危惧したのだが、その点は大丈夫。セーラー服姿のジャッキーが友人をしつこく言い寄る不良達から守ろうとしたら逆に袋にされたところを、赤城マリ子に助けられ、プロレス目指して母親の反対を振り切って家出する話とか、長野に突然帰るコーチに好きですと涙ながらに訴えるバレーボール選手姿のマキが精神を鍛える為に父親に無理矢理プロレスに入門させられるとか、彼女達を引き受けたコーチ(こういうところに佐藤允を使うのは、無駄使いもはなはだしい)の回想とか、しっかりと三文ドラマを見せてくれます。でー、敵役にはプラック・ペアが生卵とにんにくかじるとか、内田勝正扮するコーチが屋上で噛み付き攻撃の特訓の後に目潰し攻撃をそそのかすなどした後、無意味にビューティを応援する少年少女の話とか散りばめて、60分三本マッチの試合で勝負はお約束の展開で終了。佐藤コーチ、何の助言もしてくれません。映画としては何だが、本人達がきちんと自分の過去を演じたアイドル映画というのは稀少だし、何よりもきちんと善役・悪役に分かれる脚本のあるプロレスというスポーツが、さほど疑われる事も無く国民的に支持されていた時代の雰囲気を感じられる、何とも楽しい映画ではあった。
『首』。東宝の、森谷司郎監督と田中友幸製作、橋本忍先生脚本のモノクロ映画。さすがにカメラワークから演出まで、安心して見ていられますな。要は戦時中、茨城の田舎町で対立する炭鉱会社と癒着していた警察によって虐殺(頭を殴打)された炭鉱会社社員の死を巡って、軽く首を突っ込んだ、小林桂樹扮する正木ひろし弁護士が、真相の解明に横槍を入れる田代検事らに怒り、ついに埋葬されていた被害者の生首を切断して、東京帝国大学法医学教室の古畑種基教授の元に持ち込んで解剖、真相を突き止めるというもの。映画自体はどうも戦時下という雰囲気が薄く、戦争中だからこんな事件が起こった云々というくだりがどうにも軽く感じてしまうのが難点。本作で意外だったのが、映画のクライマックスが首を掘り出して持ち帰るまでで、その後の死体損壊などで訴えられた正木が警察を追い詰めて行くくだりは省略。八海事件の裁判で生首の模型に刃物を叩き付けて弁論するシーンで終了。三鷹事件ならともかく、今となっては八海事件なんて言われてもチンプンカンプンなのではないだろうか。今も活躍する正木弁護士!なんてプロパガンダ臭い終わり方をされても困るが、あさま山荘事件の映画の佐々みたいに胡散臭くない分だけマシか。トカゲのように冷たく粘着な田代検事役の神山繁やら、冷たくそらっとぼけている解剖医を演じた大滝秀治やらも凄いが、見所は大久保正信扮する帝国大の"小使い"・中原。要は首切断に役立つだろと帝大から派遣された人間だが、終始煙草吸っているか、寝ているか。首の切断も淡々と平気でこなし、終了後全員が鍋料理に手を出せないのに、一人酒飲んで舌鼓を打ち、列車で生首の入ったバケツを開けろと迫る警察官に「人間の生首が入ってるんだよー」と言い出して煙に巻く。で、中原が日暮里で降りる際に首を持ち帰ったおかげで、警察にマークされていた正木が上野駅での職質を切り抜けられるという、活躍ぶりである。粋というか、こういう部分はさすがにうまいよなあ、橋本忍御大。しかし正木弁護士、今だったら人権派弁護士とか揶揄されて、ブログとかは炎上していたろうなあ(笑)。
まずは『ビューティ・ペア 真赤な青春』。『ドーベルマン刑事』と二本立てだったか。監督は内藤誠で、まー同時代の『カリフォルニア・ドールズ』とかと比較するのは酷というか、しちゃいけませんな。1時間にも満たない尺で、ジャッキーが怪我→コンビ解散の危機の中、二人の回想→そして復帰後ブラック・ペア(懐かしいね。しかもマミ熊野やデビル雅美ではなく、初代の阿蘇)との3本マッチで勝利、という流れ。冒頭ジャッキーが倒されて入院し、回想が始まった時に「二人の出番は最初と最後だけで、後は別人が……」と一瞬危惧したのだが、その点は大丈夫。セーラー服姿のジャッキーが友人をしつこく言い寄る不良達から守ろうとしたら逆に袋にされたところを、赤城マリ子に助けられ、プロレス目指して母親の反対を振り切って家出する話とか、長野に突然帰るコーチに好きですと涙ながらに訴えるバレーボール選手姿のマキが精神を鍛える為に父親に無理矢理プロレスに入門させられるとか、彼女達を引き受けたコーチ(こういうところに佐藤允を使うのは、無駄使いもはなはだしい)の回想とか、しっかりと三文ドラマを見せてくれます。でー、敵役にはプラック・ペアが生卵とにんにくかじるとか、内田勝正扮するコーチが屋上で噛み付き攻撃の特訓の後に目潰し攻撃をそそのかすなどした後、無意味にビューティを応援する少年少女の話とか散りばめて、60分三本マッチの試合で勝負はお約束の展開で終了。佐藤コーチ、何の助言もしてくれません。映画としては何だが、本人達がきちんと自分の過去を演じたアイドル映画というのは稀少だし、何よりもきちんと善役・悪役に分かれる脚本のあるプロレスというスポーツが、さほど疑われる事も無く国民的に支持されていた時代の雰囲気を感じられる、何とも楽しい映画ではあった。
『首』。東宝の、森谷司郎監督と田中友幸製作、橋本忍先生脚本のモノクロ映画。さすがにカメラワークから演出まで、安心して見ていられますな。要は戦時中、茨城の田舎町で対立する炭鉱会社と癒着していた警察によって虐殺(頭を殴打)された炭鉱会社社員の死を巡って、軽く首を突っ込んだ、小林桂樹扮する正木ひろし弁護士が、真相の解明に横槍を入れる田代検事らに怒り、ついに埋葬されていた被害者の生首を切断して、東京帝国大学法医学教室の古畑種基教授の元に持ち込んで解剖、真相を突き止めるというもの。映画自体はどうも戦時下という雰囲気が薄く、戦争中だからこんな事件が起こった云々というくだりがどうにも軽く感じてしまうのが難点。本作で意外だったのが、映画のクライマックスが首を掘り出して持ち帰るまでで、その後の死体損壊などで訴えられた正木が警察を追い詰めて行くくだりは省略。八海事件の裁判で生首の模型に刃物を叩き付けて弁論するシーンで終了。三鷹事件ならともかく、今となっては八海事件なんて言われてもチンプンカンプンなのではないだろうか。今も活躍する正木弁護士!なんてプロパガンダ臭い終わり方をされても困るが、あさま山荘事件の映画の佐々みたいに胡散臭くない分だけマシか。トカゲのように冷たく粘着な田代検事役の神山繁やら、冷たくそらっとぼけている解剖医を演じた大滝秀治やらも凄いが、見所は大久保正信扮する帝国大の"小使い"・中原。要は首切断に役立つだろと帝大から派遣された人間だが、終始煙草吸っているか、寝ているか。首の切断も淡々と平気でこなし、終了後全員が鍋料理に手を出せないのに、一人酒飲んで舌鼓を打ち、列車で生首の入ったバケツを開けろと迫る警察官に「人間の生首が入ってるんだよー」と言い出して煙に巻く。で、中原が日暮里で降りる際に首を持ち帰ったおかげで、警察にマークされていた正木が上野駅での職質を切り抜けられるという、活躍ぶりである。粋というか、こういう部分はさすがにうまいよなあ、橋本忍御大。しかし正木弁護士、今だったら人権派弁護士とか揶揄されて、ブログとかは炎上していたろうなあ(笑)。