2005.11.15 Tuesday
ピカピカのぎろちょんが復刊
子供時代に読んだ本というのはおそらく死ぬまで覚えていると思うのだが、「モチモチの木」レベルの時代を超えた作品ならばともかく、世代限定、忘れられて久しい作品というものも多々あり、それでも記憶の中で異彩を放っていたのがこの本「ピカピカのぎろちょん」だ。まさか復刊されているとは。
ご覧の通りキツネ目の落書きのような表紙と挿絵だけ見てもその異様さが伝わってくるが、その話も児童文学の範疇に入れるのが躊躇われるような内容だ。
主人公の女の子・アタイと弟、そして遊び仲間の子供たち。ある日学校が休校になり、町のあちこちにバリケードが築かれる。「ピロピロ」が起きたのだ。そして封鎖されたアーケードによじ登り、こっそり覗いた駅前公園に築かれた高い塀、そしてギロチン。その話からぎろちょんの模型を作り、野菜を切り落とす子供たち。それは何か起こる前触れなのか。しかし子供たちの世界には何も起こらず、ある日バリケードは撤去されて、町はいつものように戻っていく。
ここで書かれているピロピロとは、明らかに革命か戒厳令である。ただしそれが作者が経験した戦時下の時代の感触を現代の子供達に伝えようとする意図なのか、そういった安直な想像を拒否するように、作者の視点は子供達の視点と世界から離れずに、読者への情報を遮断している。子供達に夢や希望でない、反戦でも平和の尊さでもない、何か不明瞭なものを共有させようとするというだけでかなり面妖な作品だが、それにしても不思議な読後感を残す作品だった。